今年、フジロックでキャンプデビューを果たす人、夏だからといっても苗場をナメちゃいけません!そんな苗場で快適なアウトドアライフを送るには? 持ち物から雨対策まで、山と渓谷社の滝沢さんにキャンプサイトでの基本的な心得を教えてもらいました!
これさえあれば! こうすれば! 超ビギナーでも快適にキャンプする方法
◎滝沢/山と渓谷社 取材@佐久間裕子
Q:キャンプサイトでテントを張る場所は自分で選べるんですか?
「もともとキャンプサイトはゴルフコースなんです。だからグリーンとかはもちろんテントを張っちゃダメ。キャンプサイトは基本的には先着順というか、持って来たテントをかついできてもらって、自分たちの好きなところにテントを張るって方式です。よく勘違されるんだけど、そこにもうテントが張ってあるもんだと思って来るお客さんがいるんですよ。『あれ? キャンプサイトって、テントが張ってあるんじゃないですか』みたいなことを言ってくるお客さんは、年間、少なくとも10人ぐらいはいるね(笑)。だからテントは必ず持参!」
Q:ふんふんテントは持参、と。レンタルできたりしないんですか?
「うん、レンタルもないよ。それと、もともとゴルフ場だからすごく広いんだけど、一番先にテントで埋まっていく場所は入口に近いところ。でも、みんなが入口に近いところにテントを張ろうとするんだよね。だから傾斜しているところにまで強引にテントを張ろうとする。だけど実はちょっと歩けば平らでもっと快適なところはいっぱいあるの。要するに快適にテントを張るんであるならば、少し歩いて快適なスペースを見つけるといいってことだよね」
Q:入口の遠くでも、快適なところはあるよと。
「そうそう。上のほうに行ってもすごく広いし。逆に周りにテントがないから、気持ちいいと思うんだよね。キッツキツで、隣がうるさいよみたいなところよりは(笑)、ちょっと離れたところに張ったほうが快適だし、風の抜けも気持ちいい」
Q:余裕を持って好きな場所にテントが建てられる時間帯ってありますか?
「うーん……本当にみんないい場所を取りたいから、年々早くなってるんだよね。キャンプサイトは木曜の昼12時にはオープンするから、初日には入口に近いほうはすでに埋まってる。でも、今年の新情報として上のエリアが新しくオープンして、キャンプサイトが広くなるの。だからそっちのほうに行ってもいいかもね」
Q:ところでキャンプサイトでやっちゃいけないことってあるんですか?
「このサイトはたき火が厳禁。ストーブとか家庭用の卓上コンロとか、火器バーナー系はゴルフ場なんでダメですよってことになってます。ただキャンプ場のゲートのまわりがバーベキューサイトになってまいて、たき火もできるし、自分たちでストーブとかもってきて、メシとかも作れるんで。それにここにシンクがあって水も出るから、調理をするならここで作ること」
Q:それから女性はお風呂が気になるんですけど。
「まずキャンプサイトにはレディースサイトっていうのがあります。ここはまっ平なの。キャンプサイトの中でも、一番フラットなエリアなんで、レディースオンリーになってるのね。だから男性は入っちゃいけないというのが原則です。このレディースサイトを出た正面に、期間中、富士の湯っていう温泉ができます」
Q:その温泉はキャンプサイト利用者だけしか利用できないんですか?
「そう。キャンプサイトチケットのみ。あとは温泉のほかにシャワーが男性5、女性5ぐらいあります。これはお湯じゃなくて、冷水なんだけども、暑ければぜんぜん問題なし。水着を持ってきて入ってもらってもいいし。それから富士の湯が込んじゃうと大変なので、周りの温泉街とか民宿街に行くと、お風呂だけ解放して日帰り入浴をしているところもあります。期間中は夜中の2時、3時までオープンしているところもあるんで、キャンプサイトの外に出ていってもいいよね」
Q:そうか、周りの温泉を利用するって手もあるんですね。話は変わりますが、夏の苗場って天気がいいと快適だと思うんですけど、一昨年は雨が降ってすごく寒かったんです。そういうときは夜はどうすればいいんですか?
「長期予報を見ていても、苗場ってすごく天候が崩れやすい地形なんだよね。だから基本的には雨の用意をしてくること。寒いっていうのは、たぶんみんな汗とか雨とかに叩かれてズブ濡れになるから、夜はシンシンと寒い思いをするんだよね。だからまず雨具!」
Q:ちゃんとしたレインジャケットとレインパンツみたいなものが必要ですか?
「うん。今は高くなくてもレインスーツみたいなものがいろいろと見つかるしね。もしくはフジロックとラフマというフランスのブランドがコラボで作ってるんだけど、敷物にもなるしポンチョにもなる便利なアイテムもあるんだよね。こういうアイテムでもいいと思うよ。要は何も雨具を持たずに来てしまうと悲惨な目に合うよってことだよね。それと、ライブに行って雨具を着てるのはいいとして、テントに帰ってきて、『さあ、着替えよう!』と思ったときに、テントの中の荷物が濡れてたっていうのが一番悲惨」
Q:あ〜、それは悲しいですね。
「テントの入口を開けっ放しで行っちゃったとか、布のバッグにただ服を詰めて来ただけじゃどうしても濡れちゃったりするから。着替えはビニールとかに入れて濡れないように防水した上で、テントの中に置いてライブに行くようにするといいよね」
Q:雨が降ったら道も滑るし、長靴とかもあるとよさげですね。
「すごい便利! キャンプサイトから一番奥のオレンジコートまで行こうとしたら、往復1時間以上かかるじゃない。山道だから雨が降るとどうしてもすごい泥道になるよね。テントまわりではビーサンをはいててもいいから、ライブに行くときは足周りをしっかりしたものにするといい。もしくは、スニーカーがドロドロになっちゃったときに、キャンプサイトでサンダルが1個あると便利だよね。だってテントに戻ってきて、またぐちょぐちょのスニーカーをはいてウロつくのはイヤじゃない。長靴まで持っていくのは大変だから、スニーカーのほかにひとつ軽いサンダルとかを予備で持っていくと便利だよね」
Q:たしかに長靴を持ってビーサンも持って……となると、だんだん荷物が大きくなっちゃいますね。
「オレも毎年行ってるけど、バックパックひとつで全部収まりきってる。それで足元はいつもビーサンと長靴1個持っていってるのね。天気が良くてテント周りにいるときはずっとビーサン。ライブに行くけど、天気悪くなるかも知れないしってときは長靴を履いていってる感じ」
Q:ほかに最低限これは持っていかないと、ってアイテムはありますか?
「あとはランプかな。ヘッドライトでもいいし、小さいマグライトでもペンライトでもいいから。グリーンステージからゲートまでだったら明るいけど、いざキャンプサイトに入って、奥のほうや上のほうにテントを張ってたら、後はずっと真っ暗なんだよね。だからライトくらいは持っていったほうがいい。あと、テントがいっぱい建っちゃうと、買ったばかりのテントじゃ、自分がどんなテントを持ってきたか覚えてないじゃない? うちらがブースを出してると、『僕のテントどこですか?』って聞きに来る人もいるからね(笑)」
Q:そんなのわかんないよって! マジでそんな人いるんですか?!(笑)
「いっぱいいるよ、ホントに!(笑) でも冷静に考えると、『あれ、ちょっと待って。オレのテントどういうのだったっけな』って思い出せないんだよね。自分たちで建てたときには、『よし! 黄色のテントの隣ね』って思って出かけるじゃん。でも、またその間にいろんなテントが建っちゃってるから、戻ってくると『あれ?!』ってなるの。だから、まず自分たちのテントに目印とか、表札とか、ポストとかつけて(笑)。まあバンダナ結ぶとか、そういうふうにしておくと帰りランプを持っていても、『ああ、あったあった!』ってたどりつけると思うんで」
Q:自分のテントがわからなくなったら1回来た道を戻ったほうがいいんですか?
「いや、山じゃないから遭難はしないから大丈夫(笑)。テントを忘れたとか、テントなくなったとか、いろいろトラブルがあるじゃない? そんなときにオレたちがよくいうのは、相談所に駆け込むよりも、近くの人と『明日の朝まで泊めてくれない?』ぐらいのコミュニケーションをして友達になっちゃえよ、と。たぶん寝かせてくれるよ一晩くらいってね(笑)。そういうコミュニケーションをしたほうがおもしろいじゃん。だからそういうときはあきらめて……」
Q:近所づきあいをしましょう、と(笑)。
「そう、近所づきあい(笑)。それがフジロックらしいかなとは思ってるんだよね。もちろん相談所に来てくれてもいいよ。相談所にいるスタッフは、アウトドア系とかの専門誌をやってる人たちだから、テントの形とかメーカーとかいってもらえれば、テントを探してあげることはできるから」
Q:その話しの流れだと、買ったテントのメーカーぐらいは控えておけよってことですね(笑)。
「そうそう。どこのなんていうテントか覚えておこう、と」
Q:あ、最初に携帯のカメラに撮っておくといいかもしれないですね。
「ああ、それいいかもしれない(笑)。そしたらすぐわかるからね。それから、今回、初めてテントを借りてきたり、買って来たりする人もいると思うんだけど、1回テントを張る練習をしてきてもらいたいな(笑)。どんなものが袋の中に入ってるのか確かめておくといいよね。だって、その場で袋からバーッと出してマニュアル見ながら張るのって大変じゃない? だから家の前でも近所の公園でもいいから、1回建ててみて、『お! こうなってんのか』って確かめてから来てもらったほうがスムーズだと思うよ」
Q:あの〜、もしかしたらこれからテントを買うって人もいるかも知れないんで、どういう基準で選べばいいか教えてください。
「まず何人で行くのか。たとえば2人で行くのに、6人用のデカいテントを持っていったら、それこそバカみたいじゃない(笑)。オレらがよく勧めているのは、2人用とかの小さいテント。大勢で行くにしても、みんなが個人用のテントを持っていれば個室になるわけじゃん。これならひとりでも簡単に建てられるから。それに小さいテントならちょっとしたフラットなスペースがあれば、すぐにピュって建てられちゃうからね」
Q:あとは……そう、夜、テントの中で安眠するにはどうしたらいいんですかね。
「耳せんとアイマスクだね。そう、キャンプサイトの奥のほうは、レッドマーキーの側だから夜中も音がスゴイよ(笑)。でも、寝ながら音が聴こえてくるのがいいってヤツもいて、わざと奥のほうに張ってる人も多いんだよ」
Q:夜寝るときは長袖のほうがいいですか?
「いや、基本的に暑いよ。あとは寝袋の質。いいヤツならあったかいし、ペラペラの毛布しか持って来ないなら寒いし。あとは濡らさない!」
Q:寝袋は持ってたほうがいいですか?
「あったほうがいいよね。寝るんだったら(笑)。やっぱり3日間フルで参加しようとすると疲れるよ。楽しみたいんだったら、休養は十分取らないと! 寝袋を買うなら、バックパッキング用というか軽量でコンパクトなもの。夏用ならすごく小さくなっちゃうから。小さいヤツを買ってくれば十分だね」
Q:では最後になりましたが、フジロックでキャンプをやる楽しさって何だと思いますか?
「みんな野外がいいから来てるわけで、だったらテントに泊ってみようよってすごく思ってるのね。こういうとすごく説教くさいけど、野に出て、星や鳥を見たり、風とか雨降りそうだなって感じたり……五感をビンビンにしておくことで、音楽もスッと入ってくるような気がしてる。アーティストも野外で歌うとすごく気持ちいいって、みんな言うじゃない。だから聴くほうも野外に行くと、3日間っていうちょっとの瞬間なんだけど、野生に還るから気持ちよく音楽が入ってくるのかなって思うんだよね。音楽を聴くなら野生に戻ってハートで聴け、そこらへんが魅力かな(笑)。それから、もしテントが建てられないとか問題が起きたら、アウトドアチームでやっている“よろず相談所”ってところがあるから。そこに来てもらえば、現場でも素朴な疑問に答えます!」